保護司として思うこと
滋賀県で保護観察対象者が担当保護司を殺害した容疑で逮捕されたというショッキングなニュースが飛び込んできてから、数週間が過ぎました。私自身も弁護士であると同時に、保護司も拝命していますので、強烈な関心を抱かされるニュースでした。この事件について、実際、何があったのかは、今後、捜査が進むにつれて、報道もされ、徐々に明らかになってくることと思います。殺害をされた保護司の方のご冥福を祈り、ご遺族の方へのお悔やみを申し上げます。
この事件を契機に、保護司という制度について、議論が高まることが予想されます。現在、保護司の担い手が不足をしており、その対策を検討している中で、今回の事件が発生しました。保護司は、国家公務員の身分がありながら、無償のボランティアになっています。そのため、人の善意をより所にした制度でもあります。このような事件が起きて、現役の保護司、あるいは、これから保護司になりませんかと誘われた方が不安を感じ、ますます、保護司の担い手が減少していくことが懸念されることは、明白です。不幸にも、今回の事件は、保護司制度のあり方についても、大きな一石を投じることとなってしまいました。
私自身は、保護司になったのは、弁護士をしていたからではなく、地域の先輩方から担い手がいないから、何とか協力してもらいたいと勧誘されて、弁護士業務が忙しく大変、躊躇はしたものの、私自身が地域で生まれ育ち、事業もさせて頂いていることから、誰かが引き受けなければならないことであるし、少しでも地域のために貢献できるのであればと保護司になりました。私自身は、弁護士として、これまでに国選刑事弁護や少年付添も数々の案件を経験してきており、一般の方に比べれば、耐性や理解があり、保護司を引き受けるハードルが低かったよいに思います。そのため、このような事件が起きてしまい、保護司の担い手がさらに減少してしまうことを懸念しています。
保護観察所の動きは速く、私個人宛にも今回の事件を受けての緊急対応の通知が届き、また保護観察官からも安全についての聴き取り調査の連絡がありました。幸い私は、現状、危険を感じる状況にはないのですが、今回の事件を教訓にして、保護司の安全確保については、抜本的な対策を講じてほしいと願っております。また、人の善意をより所にする制度にも限界があると思いますので、よりよい保護司制度の構築のため、政府には、制度見直しの議論を一段と前へすすめて頂きたいと願っております。
令和6年6月22日 弁護士・保護司 後藤 崇